のぐち英一郎の鹿児島ガイド #4 「鹿児島のホームレスさん」


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ご無沙汰しております!
本日は、久々の のぐち英一郎の鹿児島ガイド
解説するのは、9月議会でも話題に上った、鹿児島のホームレスさんについて、です。

わたくし、ほとんどお金がないまま放浪したり、家がなかったり、職務質問されたり、裸足で歩いてたりもしましたが、自分をホームレスだと思ったことはなくて、どちらかと言えば日々楽しい。

なので、ある意味において、理解が及ばなかったことではあるのですが、今日は野口さんに詳しく聞いてみました。


テンダー
のぐちさん、こんにちは。

わたくし、ホームレスのような期間もそれなりにありまして、昔は、旅人とホームレスの違いをよく考えておりました。
京都で、自発的に河原に住むようになった友人がいたり、東京でホームレスを実践してみる友人もいたりして。

今日は鹿児島市でのホームレスの現状を教えてください。

野口さん
はい。みなさん、あまりご存知ないかもしれませんが、鹿児島市には毎年春に、厚労省からのお達しで市が実施する、視認でホームレスの数を数える調査があるんです。
テンダー
野鳥の会のように?
野口さん
そうですね。
テンダー
へえー!
それって相手がホームレスかどうか、独断と偏見で決めるんですか?
野口さん
そうですね!
テンダー
それはまた結構な話ですね!
野口さん
それで、野宿者のおよその概数を出します。
テンダー
すいません、じゃあその時期に外にいれば、
わたくしも含まれている可能性がある?(よくツギハギの服を着ているから)
野口さん
うーん、公園で野宿をしていれば、ですね。
一般の方が憩わない時間帯に、
公園に佇んでいる、とか、そういうところが判断基準のようです。
テンダー
なるほど。
野口さん
その調査の結果を何年か見ているのですが、
毎年、だいたい50〜70人の振れ幅で、鹿児島にはホームレスの方がいらっしゃる。
そして、そのことを行政が把握しています。
テンダー
おお、結構いらっしゃるんですね。

ちなみに、兼ねてからわたくし、
ホームレスなのか、ハウスレスなのかという話に興味がありまして、住まい(ハウス)がないだけなのか、拠り所(ホーム)がないのか、という話です。

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そのあたりは、野口さんは現場でどのように感じておられますか?

野口さん
そうですね。
ビッグイシューの界隈では、
ホームレスは、ホームがないのではなくて、
ホープレスだ、希望がない状況だ、という話を何回か聞いたことがあります。

炊き出しに並ばれる方は、
人間関係に疲れてしまっていたり、懐疑的になっていたり、
そもそものコミュニケーション自体が難しくなっていたり、という方もいらして、

そういう方と接していて感じることは、
拠り所もなく、居場所も寝る場所もないのだな、と感じます。
ホームレスであり、ハウスレス。

ただ、寝る場所がないというだけの話なら、
やりようはたくさんあると思うのですが、、

テンダー
あ、今お話に出た、ビッグイシューってなんですか?
「ホームレスを支援する、ビッグイシュー」
野口さん
ビッグイシューというのは、
もともとイギリスではじまった、ストリートペーパーです。

pic_coverホームレス生活の人に、仕事を作り、自立を応援する。
イギリスはサッチャー政権(1980年代)の頃から、とても高い高失業率で、若いホームレスがたくさんいる、と言われています。

ホームレスの方に何か仕事を、と言ってみても、仕事そのものが本当にない。

その中で、若者の社会問題に特化していて、
かつ、エンタータイメントや文化・情報も融合した雑誌を作ろう
そしてホームレスの方に売ってもらおう、ということが始まりました。

日本でも2003年から、大阪を拠点に販売がはじまります。

もともとは、完全な野宿生活者じゃないと販売員になれない、という話だったんですけど、今は、生活保護を受給していても販売ができる、と販売員の条件が変わり、鹿児島でも2008年の、秋から販売をしています。

テンダー
ホームレスの人が、その雑誌を売るってことですよね?
野口さん
そうです。1冊が300円、そのうち140円が本代、
残り160円が販売員の収入になる、そういう仕組みになっています。
テンダー
平均で1日どれくらい売れますか?
野口さん
鹿児島で、1号あたり、大体50冊売れていきます

発刊の頻度が、月に2回、
毎月1日と15日に、新刊が出るのですが、
常連さんは大体、発売日に買います。

なので、新刊発売日にばばっと売れて、
その他は売りにくい、という状況もありますね。

販売員さんは週に5日立つ、という約束で、
全国各地、いろんなところに立っているのですが、
売れない中、1日声を上げて売り続ける、というのは本当につらい。これから寒くなりますし。

テンダー
なるべく常連さんは分散して買ってほしい?
野口さん
(笑)ええ。
あとは、あまりまだ知られていないので、
もっと広く知ってもらえたら、と思ってます。
テンダー
鹿児島ではどこで売ってますか?
野口さん
鹿児島中央郵便局の前のお茶屋さんのところです。
テンダー
中央駅の向かって右側のところですか?
あそこのみ?
野口さん
はい。
今、販売さんがひとりだけなので、
あそこだけですね。

本当は、2人くらいいらっしゃれば、とは思ってるんですけど、
街頭にずっと立つのは、やっぱりしんどいです。

立っていて、絡まれるとかはないんですけれど。

テンダー
なるほど。
では、月100冊、ひとりの方が売るということですよね。
すると、月あたり100×160円 = 1万6千円で、
その人の生活はそれで成り立つんですか?
野口さん
今、鹿児島で立っている方は、
生活保護を受給されています。

なので、ビッグイシューの売り上げの報告をし、
保護費から売り上げ分が相殺されて、
その分は、保護の受給額から引かれています。

テンダー
へえ!
でも売る?
野口さん
そうですね。
もらうお金ではなくて、
自分で稼ぐお金でやっていきたい、というご本人の意思で。
テンダー
へえ。
とても考えさせられるものがあります。
野口さん
ちなみに、
去年の初め頃に販売をされてた方は、
1号あたりで120冊くらい出されたこともあって、
そうなると月3万円くらいにはなるんですね。

そうすれば、なんとかやっていけるくらいにはなりますよね。

テンダー
路上で120冊の本を売る、ってすごいことですね。
野口さん
ビッグイシューというのはそういう雑誌です。
日本中、大きな駅のそばで売っているので、
ぜひみなさんにも応援してもらいたいですね。

(次ページ、鹿児島での支援活動の実際について)


この記事の著者

テンダー

ヨホホ研究所主宰の、泣く子も訛る社会派ヒッピー。 電気関係、ウェブ、文章表現、写真、選挙、先住民技術、などが研究対象。 2016年のテーマは、持続可能性の本を書くことと、アウトフローを極めて綺麗にすること。