のぐち英一郎の鹿児島ガイド #6 「3年間で13億円。鹿児島市のコネ人事問題があきらかに」






鹿児島市、市役所との駆け引き





テンダー


もひとつ、お尋ねしたいのですが、
議会で質問をするときに、
例えば今回聞いたことは、向こうにしてみれば聞かれたくない、痛いことですよね?



でも、その聞かれたくないことの調査そのものは、市の人に頼むわけですよね。

ここ調べてください、この数字出してください。というように。


野口さん


そうなります。

議会の政務調査課を通して、資料照会を頼む分と、

あとは一般の方でも「これどうなのかな?」と思えば、
どこでもでかけていって、聞いたりはできますよね。

議員には特別な調査権がないので、直接聞いて回ることも多いです。

テンダー


へえ!

野口さん


市役所の窓口に行って、
「これ、おかしいですよね?」ということを質問される方は
ときどきいらっしゃるみたいです。
それと同じように、いくつかは直接いこうと思って、行ってきました。


たとえば、メルヘン館には別件でおかしなこともあったので、
その指摘も兼ねて、直接うかがいました。
その場でひとつ不正を質して、改善してもらって、というように、
直接足で得る情報や活動も多々あります。


テンダー


うんうん。

その、聞かれたくないことを、聞かれた市役所の人たちが情報を出さない、こともできるわけじゃないですか。

野口さん


もちろん、そうですね。

テンダー


それって、どういう裁量でなされていくんですか?

野口さん


ひとつには、こういう人事のことなので、
個人情報の保護、というだけで、ほぼすべてを秘匿することも
やれなくはないです。



しかし、今回は個人を責めたいわけではなかったので、
公募ではない形での人事がどういう状況にあるのか、
それに関連するお金の状況であったり、調べていくことが、問題の顕在化につながると考えたので、そういう形でお願いしました。

テンダー


なるほど、質問の角度の問題なんですね。



それと、直前に、市役所から議員に出される情報が変わる、というのを聞いたんですけど、
それは、どういうことなんですか?何を目的として。


野口さん


議会というものは、
議員が「通告」を出して、何を質問する、ということを事前に市役所に伝えておくんです。



事前に伝えておけば、向こうもこういうことを答えてくる、という答えを事前にいただけるわけなんですが、そこで出してきたデータの数値が、なぜか向こうによって、勝手に解釈されたものだったりするんです。



手渡しのやりとりなので、
「こういうことは聞いてないんですけど、これはあなたのそういう解釈の結果なんですね。そしたらそれを踏まえてやりとりをしますから」と伝えて、その場が終わります。

しかしその後、気を遣われてなのか、
向こうからは「よくよく通告を読み込めば、こういうことは聞かれてないですから、ではデータを作り直さなくては!」ということになってしまい、
議会の本番30分前に、控え室に来られて
「さっきのデータが違いました」というようなことを、よくなさいます。



これは、あったら困ることなのですが、別段珍しいことではありません。



今回は、決定的な数字、というようなものについて、ではありませんでしたが、
本会議は私も集中しています。

「あ、ここがこう変わったんだっけ?」と思って、書き直しを迫られたりすると、注意が割かれてしまうんです。
直前でデータが変わると、トンチンカンなやりとりをしてしまいかねないので、
直前にはやめてほしいですね。


テンダー


でもそれは、きっと市役所的なテクニックなわけですよね。

野口さん


だと僕は思いますね

テンダー


うーん、なるほど。

議会の内容のことで、他にこれは話しておきたい、というようなことはありますか?






鹿児島市、市職員採用のこれから





野口さん


たった3年で10億円を越えるお金の使われ方であれば、
天下り・再就職であっても、必要性も考えねばならないし、
この時代に、この規模の無公募は尋常ではないと私は思います。

このことは、スピード感を持って改善が進めばな、と思っています。

テンダー


わたくしが思ったのは、この3年間の「縁故採用などで13億円」というお金って、

感情と理屈とが切り離しがたい額だと思ったんです。議会を聞きながら。



本当にためになった13億かもしれないし、そうでもない13億かもしれないし、
縁故だからいけないということかも、わからないわけじゃないですか。

無公募採用の方、個別の37人の働きっぷりも見れないし、
仕事はできないけど、職場にいると他の人の生産性が倍になるような人柄かもしれないし。


野口さん


そうですね。

テンダー


ハコモノは、明確に、これは50億円かけて作ったけど、利用率が低い、とか
わかるんだけど、なんでこんなに税金って採られるし、使われるんだろう、と思ったときに、
ああ、こういう使われ方をするんだな、とこないだの議会で思って、
はじめて合点がいったんですね。



なまなましい使われ方。
分けられず、不可分な税金の使われ方。


すごく人間的な額だと思うんですね。人間的に使われたお金。

こういうもののムダっていうのを省いていこう、っていうのとか、
こういうものを明るみに出していこう、っていうのは
相当しがらむというか、ドロドロするだろうな、と思いました。


野口さん


そうですねえ。


もちろん、コネでもなんでもいいから、
この人が入って来てくれたおかげですごく良くなった、と言う状況はあるのかもしれません。

しかし、そのくらいの才能豊かな人であれば、なおのこと公募の中の競争で入っていただきたい、と私は思います。



誰それの息子さん、娘さん、縁故だからダメ、ではなくて、
開かれた門戸に、才能豊かな人がどんどん入ってきて、そこに税金がしっかり使われる。
そしてその中で頑張って仕事してもらえたら、ということではないでしょうか。



もしくは、無公募を敢えてするのであれば、すさまじく優秀な方に、
「どうしようもない低賃金なんだけど、ここの文化のために、一肌脱いでください」という指名をして、役職につくお願いができるくらいであれば、無公募でも対外的に説明がつく、とも思います。



縁故採用の話は、大いにしがらむ話です。
扱いづらいけれど、だからといって、放っておいていい話ではないですよね。


テンダー


なるほど。

この問題が解決していくためには、どうしたらいいと思いますか?


質問を聞いていて、「競争」「選考」ということばがあって、
競争と選考、選考がおかしい言葉だったような。


野口さん


「選考」は、市役所の人が使う言葉なのですが、
財団の決まりの中にも、文字として、
採用は競争試験か、「選考」で、と書いてあるんです。



彼らはきまりに基づいてきちんと採用している、とおっしゃるんですけれど、
その、「選考」という言葉には、不透明な意図が働く余地がありますよね。


なので、決まりからまず、「選考」の文字を外すことが今回の解決策のひとつだと思います。


そして採用を、公募・競争試験に一本化し、それを早く実現できれば、不透明な採用はぐっと減るのではないでしょうか。


テンダー


それは2、3年を見据えて?

野口さん


そうですね。

でもこのことは現在進行形なので、2014年の間に、進展を実現できれば、と思っています。

他のことよりスピードが必要なテーマですね。

テンダー


役所の中でも、唯一、石踊(いしおどり)教育委員長さんは「改善します」ってはっきり言ってましたね。

野口さん


はい。

やはり、かごしま教育文化振興財団の縁故採用の多さ・異常さは、
並外れて現状でおかしいので、ああやって答弁しないと
とても釣り合わなかったのでは、と思います。



ちなみに私は教育長のことは、尊敬していて、素晴らしい方だと思っていますが、
かごしま教育文化振興財団の担当が教育委員会なので、
ああやって教育長が答えることになります。


テンダー


じゃ、ほかのところは、改善します、と言わなくても「まあいいかなレベル」と受け止められた?

野口さん


最後に森 博幸市長が

「今後も競争と選考は残すけど、できるだけ公平な雇用機会の確保、機会均等に務めたい」とお答えになったので、全体のことは、そこに包括されています。



あれは、市長として答えたので、「できるだけ公募にしていきたい」と市長がお答えになったわけです。
市長があそこまでいえば、他のところもある程度は方針が行き渡るでのはないか、と私は思います。


テンダー


ほー。

ふれてよかった話題ですねえ。

野口さん


そうですね。

本当にやってよかった質問だと思います。

テンダー


でも、今回のことを機に、情報がもう出ないようにするのって、簡単ですよね。


内部から漏れ伝わってくる話が今後減るわけで。


野口さん


はい、これからは正面から出る量も減るでしょうから、
それぞれ個別に会いに行くつもりです。



個別にお会いしても何も聞き出せないかもしれませんが、
そのことを確認するためにも行くつもりです。


テンダー


いやはや、おつかれさまでした。

じゃあ野口さんも、刺されないように、今後ますますのご活躍を。

今年もよろしくお願いしまーす!

議会質問中に出てくる、団体名と状況の予備知識

1.鹿児島市土地開発公社について

担当課は管財課の財産管理係。お仕事は公共的に使う用地の先行取得と管理と処分。

2.財団法人 鹿児島市住宅公社(平成24年11月に解散、人事情報一切不明)について

担当課は建設局の住宅課住宅管理係。24年度のお仕事は売れ残っていた星カ峯みなみ台の宅地分譲と賃貸住宅の管理。

3.公益財団法人 鹿児島市衛生公社について

担当課はリサイクル推進課の庶務係。お仕事は家庭と公衆トイレのし尿運びだしと運搬と処理。タフでハードな現場。現場作業はなかなか人手が集まりにくいとのこと。

4.公益財団法人 鹿児島市中小企業勤労福祉サービスセンターについて

所在地は鹿児島中央駅前ダイエーの七階。担当課は雇用推進課、お仕事は企業等が単独では難しい福利厚生、融資あっせん、健康増進などのサービスを会員に提供すること。議員は特別公務員なので会員になれないそうです。

5.公益財団法人 鹿児島観光コンベンション協会について

担当課は観光企画課。所在地は鹿児島中央駅前ダイエーの七階。大会や会議、行事やイベントをコンベンションと総称します。鹿児島におけるそれらの誘致に寄る関連産業活性が主目的。JTBのOB職員も市役所天下りの方同様のポジションでおつとめ。観光案内所の女性ガイドが緊急にやめることを想定した特殊なルールを持っています。

6.公益財団法人 鹿児島市水族館公社について

担当課は、平川動物園同様建設局の管理課庶務係。お仕事は水族館の管理運営。水族館人事は天下りと特別な専門家以外ほぼ全員公募。模範的です。

7.公益財団法人 かごしま教育文化振興財団について

担当課は教育委員会総務課企画調整係。お仕事は、6つの教育文化ハコモノの管理運営。今回のコネ人事縁故採用疑惑の最大の問題対象です。
6つとは、かごしま近代文学館、かごしまメルヘン館鹿児島市立科学館鹿児島市立ふるさと考古歴史館鹿児島市民文化ホール谷山サザンホール数十年来、嘱託員さんはすべて縁故採用・口利き・コネ人事とのこと。絶句。

8.一般財団法人 鹿児島市健康交流促進財団について

担当課は健康総務課の健康づくり係。お仕事は郡山のスパランドららら、マリンピア喜入、郡山総合運動場の管理運営。こちらは天下り以外の人事はすべて公募で長年の随意契約も皆無の水族館以上の模範的な状況です。

9.公益財団法人万之瀬川水源基金について

担当課は水道局総務課総務係。お仕事は万之瀬川流域において、森林整備等を行う関係市に対する事業費の助成を通じて、同流域の森林整備を促進し、水源涵養、国土保全、地球環境保全等の公益的諸機能を高め、地域の産業振興、一体的発展に資する。地球・自然環境の保全・保護・整備:地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
。国土の利用・整備・保全:国土の利用、整備又は保全を目的とする事業

10、公益財団法人 鹿児島まちづくり土地区画整理協会について

担当は区画整理課管理清算係。お仕事は区画整理に関する自治体からの業務委託です。24年度は鹿児島市、薩摩川内市、奄美市、霧島市、南さつま市、奄美市から受託。もうすぐ、2億5千万円の協会会館を新築します。必要性に疑問が残ります。
ここの人事は公募以外がきわめて多く、教育文化振興財団と疑惑の双璧をなします。

11、公益財団法人 西郷南洲顕彰会について

担当課は生涯学習課管理係。
お仕事は西郷南洲顕彰館の管理運営。こちらは来館者の伸び悩み等 収蔵の充実のわりに運営に苦慮しています。広報や企画等にデザイン改革が必要ではないでしょうか。

12、鹿児島中央地下駐車場株式会社について

担当課は、市街地まちづくり推進課。お仕事はテンパーク(中央公園)の地下にあるセラ602の管理運営。
セラの割高感はたびたび指摘されますが、民業圧迫の回避のために値下げは進みません。ただし、慢性赤字なので税金映画館のテンパラと地下通路でつなげて収益改善の努力中。

13、株式会社 まちづくり鹿児島について

担当課は経済政策課中心市街地活性化推進室。こちらは商工会議所と共同。お仕事は街なかサービス推進業務として天まちサロン運営と中心市街地活性化のセミナーや空き店舗対策。


野口英一郎
鹿児島市議。2000年に 28歳で初当選。以来4期当選、現在にいたる。
なかなかわかりづらい政治の話を、議員だからこそ知りうる内情も混ぜて、わかりやすく解説します。
趣味は、水泳と読書と料理(片付けは苦手)。
entaku.info


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この記事の著者

テンダー

ヨホホ研究所主宰の、泣く子も訛る社会派ヒッピー。 電気関係、ウェブ、文章表現、写真、選挙、先住民技術、などが研究対象。 2016年のテーマは、持続可能性の本を書くことと、アウトフローを極めて綺麗にすること。