鹿児島の洋上に世界最大の風車群建設計画が持ち上がるが、その環境配慮書がてんでダメ、という話。


どうもこんにちは。とっても久しぶりにテンダーです。
今日は降って湧いたかのような事態、巨大風車群が鹿児島の吹上浜沖に来るのか来ないのか? というお話です。

ことの発端。INFLUX社の吹上浜沖洋上風力発電事業というものを窪さんから教えてもらう。

元官僚の窪さんがツイッターで、世界最大の風車群が鹿児島の沖に建設される計画がこっそり進んでいる! と取り上げていたのがことの発端。

追って事業者であるINFLUX社(インフラックス社)のウェブサイトを見ると、、、

わあ、とってもいかがわしい。
(こんなに大事業なのに、配慮書のリンクと事業所住所しかコンテンツがない)

INFLUX社の吹上浜沖洋上風力発電事業配慮書のダメっぷり

基本的な説明と、主だった要点のいくつかは窪さんのブログをご覧ください。いつもながら要点をまとめて格調高いのに読みやすくまとめる見事な技。さすが!

吹上浜沖に世界最大の洋上風力発電所を建設する事業が密かに進行中(今なら意見が言える)

というわけで、私はそれ以外のそもそも論的なところで色々言いたい。

そもそもの話。経済産業省の委託事業、福島の世界最大7MW風車は7年かけてうまくいかなかった。

2011~18年度に福島沖で実施された、経済産業省の7MW(7メガワット=7百万ワット!)クラスの浮体式風車が実際はうまくいかなくなって、

鹿児島の錦江湾(桜島に面してる内海)まで引っ張ってきて解体しているのが今月(2020.7)なのです!

福島・浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業のいま

(以下、比較のために2MW風車はうまくいった話から引用)

総括委員会は、2MW風車について、稼働率(稼働していた時間の割合)が94.1%、設備利用率(実際の発電量が、定格出力での発電量の何%かを示す数値)が32.9%(17年7月~18年6月)で、商用水準に達していると認めました。そのうえで、浮体式特有の高い維持管理費の低減に向けた取り組みや、長期の運転実績の積み重ねによる保険料の低減など、今後の導入に向けた環境づくりのため、2MW実証機は運転継続が必要と判断されました。

おお、2MWはうまくいったんだね、よかったよかった。
ところが。。。

一方、7MW風車は、稼働率16.4%、設備利用率3.7%(17年7月~18年6月)と、油圧システムの初期の不具合などで稼働率は低い水準にとどまりました。この実証機の規模は、海面から最高到達点までの高さが189m、翼の回転軸までの高さ105m、翼長81.7m、重量1700トンで、規模、出力とも世界最大です。ただ、油圧システムの課題が残り、現時点で商用運転の実現は困難なうえ、維持管理費も高額であることから、同委員会は撤去の準備を進めるべきと判断しました。

というわけでまず一つ目。
設備利用率3.7%って、年間13.5日しかフル稼働しなかった ってことだからね!

これは、再生エネルギーだからいいじゃんとかいう話のもっと手前で、使えないもの作ってどうするのか、ということです。
福島の例は実験なので「使えないものであることがわかった」という結論が収穫だけど、

鹿児島の場合は事業なので、すでに使えないものであることがわかっているのに、そのために再エネ割賦金が住民の電気代に割り振られ、工事によって海は汚染され、かつほぼ稼働しない。

てのはただ単純に意味がないでしょ、というのが一つ目。


二つ目は、この福島の7MW風車のサイズが以下の通りなんだけど、

風車ロータ径:167m,
ハブ高さ:105m,
ブレード先端高さ:189m
浮体深さ:32m,
稼働喫水:17m,
長さ:85m,
幅:150m
係留チェーン本数:8本,
チェーン径:132mm

なんと、鹿児島に計画されているINFLUX社の吹上浜沖洋上風力発電事業の浮体式風車25基は、
これよりもでかい・・・!

ローター直径: 164〜220m
ハブ高さ: 105〜138m程度
海水面からの風力発電機高さ: 190〜250m

もう、事業者のINFLUX社が何考えてるのかさっぱりわかんないけど、経産省の事業で、一基でうまくいかずその場で解体もできず、わざわざ日本を半周までして解体しているのに、

それよりもでかいものを25基作る計画だということです。
よっぽど自信があるんですね。

さらに福島風車の総括を読むと、

浮体式を普及させるには、高い建設コストが大きな課題の1つです。福島県沖での実証でも、浮体の小型化やチェーンアンカーの軽量化、地元港の活用によりコストを下げる努力が続けられてきました。事業化に向けては、洋上風力用作業船の充実や、送電線へのアクセス確保、送電容量の強化を目的とした送電網の整備も必要です。また、巨額の資金調達も課題です。

地元港の活用・・・?
そんなでかい港、いちき串木野以外にあるの?

しかしいちき串木野の港は漁業が充実しているだろうし、そこで風車作るのは無理があるのではないか?

率直にいって、吹上浜沖洋上風力発電事業の浮体式の計画は、よくわかってない事業者INFLUX社が机上の空論を並べているだけに見える。

他にも、INFLUX社の配慮書の間違いや捏造、調査不足など

1.陸地から5km離れているの詭弁と、見込角算出の捏造

配慮書には「事業想定区域より5km離れているので」という表記がよく出ているが、そもそもいちき串木野のベイサイドは事業想定区域から5km以下の距離であり、南さつま市の高崎山展望所あたりに至っては2.5kmも離れていない


(配慮書にテンダーが情報を追加したもの)

これは、事業者INFLUX社が提示している地図の縮尺を元に比較的正確な円を足したもので、どっからどう見ても2.5kmの円は事業想定区域に入っている。

この時点で「第4章 第一種事業に係る計画段階配慮事項に関する調査、予測及び評価の結果」の、「計画段階配慮事項の選定」に関わってくる。

これは、「大気環境」「騒音及び超低周波音」についてを配慮する事項から外す理由として、「陸域から約5km程度離れているから」としているのだけど、

いや、2.5km以下じゃん!
その理由で事項外しちゃダメじゃん!

てのがまずひとつ。


ふたつめは、先ほどの図で高崎山展望所の円から事業想定区域までは2.5kmなかったのに、配慮書では、

高崎山展望所からの距離は2.9kmとなり、
見込角は4.9度となっている。

2.9km?

ちなみに見込角とは、遠くから風車がどれだけ大きく見えるか、の目安みたいなものであり、
5度以下であれば気にならないから問題ない、というのがこの配慮書のスタンスだ。(それも何の基準もなく、彼らが言い張っているだけ。窪さんによると満月の見込角が0.5度だそうです。満月で0.5度!)

そして、距離が離れていれば、計算上の見込角を小さくできる。

ゆえに、配慮書では高崎山展望所の距離を偽ってまで、ギリギリ見込角4.9度になるように収めているのだろうと私は推測する。

ちなみに2.5kmで計算すると、見込角は5.7度。
2.3kmで計算すると(多分実際はそのくらい)、見込角は6.2度!

事業者INFLUX社は、景観対策ガイドライン案(昭和56年! かつ案! 40年前の案!)なるものを引用して、見込角5度以上の作用として「景観的にも大きな影響がある(構図を乱す)」とはっきり書いている。

一体何がしたいのかわからないが、自分の出しているソースに拠ると自分の言っていることが成立しないので、ソースに合うように計算を捏造する。
(だったら最初からそのソースを出さなければいいのでは、と私は思うが)

というわけで自爆してもらって感謝しきりではあるが、先方のソースによると、今回の風車群は距離を捏造しなければ、「景観的にも大きな影響がある(構図を乱す)」ことが明らかになったのである。

景観に大きな影響があれば、鹿児島県の「鹿児島県風力発電施設の建設等に関する景観形成ガイドライン」に抵触する。

事業者さんも大変ですね。

2.国外の論文と照らし合わせると、前提条件が大きく変わる箇所

そしてこちらは語学に堪能な友人に調べてもらってわかったソース。

モノパイル(風車の軸)の打ち込みは魚を損傷するレベルの音圧がある。

この配慮書には、風車の連続運転における音圧(デシベル db)の生態系への評価はあるが、工事時の音に関しては書かれていない。

しかし、次の論文には

A review of offshore windfarm related underwater noise sources.(英語)

モノパイル打設工事の際の音は、直径508mmで189dB、直径914mmで201dBの音圧レベルであり、魚類の損傷レベルに近いものである。

との研究結果が載っている。

ちなみに今回打ち込むモノパイルは直径1000mmなので、201db以上の音圧が出るのは明らかである。

そして、今回の配慮書にも これまたしっかりと210db以上で損傷レベルと書いている。

よって、1000mmのモノパイルを打ち込む今回の工事が、魚類への損傷レベルに近い影響を与えることを、事業者INFLUX社が認めていることになる。

ちなみにドイツでは、モノパイル打設工事の際、水中音暴露レベルは750m離れた地点において160dB、またpeak levelで190dBをそれぞれ超えないことが求められているそうな。
(Federal Maritime and Hydrographic agency/Federal Ministry for the Envirinment, Nature Conservation and Nuclear Safety Eds., 2014)。

風車の低周波被害は15km先の住居に及ぶ、という研究

フィンランドの研究は、風力発電の低周波音害は発電所から15㎞の住居に及ぶことを明らかにした

2017年後半にフィンランドのいろいろな場所で行われた低周波音測定の結果、風力発電から発生する低周波音パルスがほとんどあらゆる条件下で伝播し、検出される代表的な距離は15~20㎞であることがわかった。アメリカの研究でも、低周波音は、有利な条件下では風力発電から90㎞も伝播する。

症状の発生は、発電所からの距離15~20㎞で顕著に減少する。風車が別の方角にあっても、ある人が長くそこにとどまれば、症状のリスクは増大する

もっとも典型的な症状は、夜間の睡眠時間に眠りを妨げられたこと、疲労といろいろな痛みである。

というわけで、事業想定区域から15km先までの枠を地図に重ねると、、、

いちき串木野市、日置市、南さつま市がほぼすっぽりと入り、かつ鹿児島市と薩摩川内市の一部まで入ってくる。

この範囲の住民に睡眠障害が起こるコストを、事業者INFLUX社は払う覚悟はあるのだろうか。

3.日本語が成立していない・INFLUX社の配慮書自体がマスターベーション的である

支離滅裂なところの例

例えば鳥類に関する環境評価のところ、

事業実施想定区域及びその周囲では、ノスリ、ハチクマ、サシバ、アカハラダカの渡りが確認されているが、事業実施想定区域では確認されていない。

どっちなのか!

政治家や官僚的な特殊話法の一形態なのかと思ってしばらく考えたけど、結局わからなかった。

そしてその後のページでは、事業区域がしっかり飛行ルートにかかっている、という。

他にも窪さんが指摘するように、
海に作るのに「山の稜線を乱さない」と書いてあったり、何かをコピペしたのが一目瞭然

大学生のレポートか!
(だんだん腹立ってきた)

INFLUX社のマスターベーション配慮書

そもそも、こういう環境評価って、
「事業者であるINFLUX社は影響があると思う・ないと思う」の話をするためのものじゃないでしょ。

しかしこの配慮書では例えば、

デンマークの事例を元にモデル予測を行うと、今回の風車設備が想定区域の流速を2%減速させる、という結果となった。

よってほとんど影響はないと予測されている

って、
なんだよ!って話なのね。

モデル予測を行って流速が2%減少だった、というのは、ある一定の既知に基づいたものとして評価されるものだとは思うが、
その結果の影響がないかどうか、というのは
「お前の意見もしくは所感を聞いてるんじゃない」って話だと思うんですけど、界隈の方どうですか。

第4章においては、ほぼ全てがそう。
「調査した」「予測した」「影響はないと評価する」の繰り返しが44ページ。

事業者INFLUX社の意見をいくら聞いたって、
環 境 評 価 に な ら な い だ ろ!!!

そして、コウモリの項は「影響がある」という表記が散見されるのだが、
表4.2ー1に示されるように

調査及び予測結果をもとに、事業者の実行可能な範囲で回避または低減されているか検討する。

と、自分で言っておきながら検討しないのが、この配慮書の安定の不誠実っぷりです。

回避または低減の検討なんてしてないじゃん…。

一時が万事、こんな感じ。一貫性がなく確実性もなく、マスターベーション的で、、、一言で言えば不誠実。

そもそも現状は、配慮書を「公開」していると言えるのか?

もうね、これは声を大にして言いたい。

まず、事業者INFLUX社は配慮書のリンクをウェブに乗っけている(2020.7/31まで)が、

そのページも「htmlの練習ですか?」というくらい簡素なものです。


(親切な人は li でリストにできるって教えてあげよう!)

んで、この各リンクをクリックしても、
・PDFを保存できない
・右クリックできない
・プリントアウトできないようにロックがかけてある

・・・。

公開されている配慮書なのに、
その意図はなんなんだ。
残って欲しくない理由でもあるのか。


もうね、こういう時は魔法を使うに限りますよ。

「ラミパス ラミパス ダウンロードできるように、なーーーーれーーーーーー!!!!」



(ダウンロードはこちら!)
1. (仮称)吹上浜沖洋上風力発電事業 計画段階環境配慮書(表紙・目次)
2. 第1章 第一種事業を実施しようとする者の名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地
3. 第2章 第一種事業の目的及び内容
4. 第3章 事業実施想定区域及びその周囲の概況(1)
5. 第3章 事業実施想定区域及びその周囲の概況(2)
6. 第4章 第一種事業に係る計画段階配慮事項に関する調査、予測及び評価の結果
7. 第5章 計画段階環境配慮書を委託した事業者の名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地
8. 資料編



というわけで抽出の魔法を使うことで、無事にダウンロードできるようになりました。

でも印刷できないって?

大丈夫、この魔法(ウェブサービス)で簡単に解除できるから!


I love pdf | PDF ロック解除

これにて無事印刷できるようになりました。


なになに?
それでももう数日で見れなくなっちゃうんでしょって?

大丈夫!ウェイバックマシーンで、今日の日付で事業者INFLUX社のサイトを丸保存してあるよ!

Wayback Machine | 吹上浜沖洋上風力発電合同会社 TOP PAGE

Wayback Machine | 吹上浜沖洋上風力発電合同会社 PDF

(未来永劫のダウンロードはこちら!)
1. Wayback Machine | (仮称)吹上浜沖洋上風力発電事業 計画段階環境配慮書(表紙・目次)
2. Wayback Machine | 第1章 第一種事業を実施しようとする者の名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地
3. Wayback Machine | 第2章 第一種事業の目的及び内容
4. Wayback Machine | 第3章 事業実施想定区域及びその周囲の概況(1)
5. Wayback Machine | 第3章 事業実施想定区域及びその周囲の概況(2)
6. Wayback Machine | 第4章 第一種事業に係る計画段階配慮事項に関する調査、予測及び評価の結果
7. Wayback Machine | 第5章 計画段階環境配慮書を委託した事業者の名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地
8. Wayback Machine | 資料編

というわけで、吹上浜沖洋上風力発電事配慮書は、未来永劫誰でも見れるようになったのであった。

めでたしめでたし。


じゃなくて!

是非とも2020.7/31までに各市役所・支所の縦覧場所で、ご意見書を投函してほしい

2020.7/31追記:
皆様のご意見の多さにより、さらに1週間延期され、8/7まで意見提出できるようになりました!

以上は環境活動家として(またダイナミックラボに滞在しているスーパーマンたちの力を借りて)、今日調べたりまとめてわかったりしたことなんだけど、以上の話から、一番引っかかるところをピックアップしてもいいし、

うまくご意見できるかわからない人のために、窪さんのブログの要点をまとめて、ご意見書に添付できるようにもしといたから、

ダウンロードはこちら
(なんて親切! 窪さんにも了承を得ています)

皆さんは、7/29,30,31の3日の間に、8/7までに

・いちき串木野、日置、南さつまの市役所か各支所に行き、

・吹上浜沖洋上風力発電事業縦覧場所で、

・ご意見書に「名前」「住所」「日付」「一言でいいので、ご意見」を書き、

・上記のご意見書を添付すれば、

計画見直しの力になると思われます。というかぜひご意見してほしい。お願い!

私ももちろん期日までにご意見するし、このブログ本文をまとめて、各市町村長と知事に意見書として送ろうかな。

いやー、久々に調べてまとめた。風林火山!


この記事の著者

テンダー

ヨホホ研究所主宰の、泣く子も訛る社会派ヒッピー。 電気関係、ウェブ、文章表現、写真、選挙、先住民技術、などが研究対象。 2016年のテーマは、持続可能性の本を書くことと、アウトフローを極めて綺麗にすること。