のぐち英一郎の鹿児島ガイド #1 「ドルフィンポート体育館事件の解説」


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みなさんこんにちは。テンダーです。
本日よりはじまりました、のぐち英一郎の鹿児島ガイド。

わたくし、いろんなところを旅してきたけれど、鹿児島はその規模に対して、とても
閉鎖的だと思うさっこん。
60万人都市なのに、なんでこんなにオープンじゃないのか?コップンカー!

というわけで、鹿児島市議の野口さんに、市政の裏表(茶道みたいだね)を解説してもらおう、という企画です。目指せ鹿児島の池上彰

というわけで、一回目は、今年の春から、鹿児島を恐怖のずんどこに陥れた、
「ドルフィンポート体育館事件」について。


野口さん
みなさん、はじめまして。野口英一郎です。
テンダー
野口さんこんにちは。
わたくし、野口さんとは、鹿児島のオーガニックフェスタという大きな野外フェスや、文化的なイベントごとがきっかけで知り合いました。今日は、解説をよろしくお願いします。

野口さんはよく、声がでかいからおっかない人だと思われてるみたいですけど、文章だとそう見えないからいいですね。

野口さん
そうですね。なんだったら フォントサイズも下げましょう。
こちらこそ、よろしくお願いします。

というわけで、今日の解説は、
ドルフィンポートに体育館新築事件から。

「ドルフィンポート体育館事件」
野口さん
鹿児島市内にはドルフィンポートという、総木造2階建の大きな建物があります。
場所は、桜島フェリーや、水族館のすぐそばで、敷地からは桜島がどーんと見えて、錦江湾に面した風光明媚な場所ですね。

緑地帯で、市民の方にも親しまれている憩いの場でもあります。

以前、そこの埋め立て地をどうするか、となったとき、90年代前半のバブル崩壊で利用が停滞していたので、
鹿児島県を中心に、埋め立て地利用案の設計コンペがなされたんですね。

そこで選定された地元大手の山形屋案をもとに、ドルフィンポートは建設されます。

山形屋と県との契約は、15年の期限付きの土地の貸借です。
その後は、上っ張りを解体してサラ地で返す、ということになっていました。

ドルフィンポートに入るテナントは、山形屋中心のグループが選んだ外食部門です。
そして、お土産と、外食を提供できるような施設にしよう、ということでドルフィンポートは出来ました。

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[ドルフィンポート。wikipediaより]

テンダー
国内最大級の有機農業のイベント、オーガニックフェスタなんかも開催されますね。
野口さん
はい、そこの契約が 2020年で更新時期を迎えるので、ではサラ地にして跡地利用を考えていきましょう、という話だったんですけども、

今年、2013年の5月末に、地元紙で突然、

・更新時期を5年前倒しして、
・テナントには補償金を払って、撤去をし、
・2020年の鹿児島で40年ぶりに開催する国体のために、県立体育館と付帯施設の整備を、200〜300億円かけてやる、

ということが発表されました。

体育館単体は120億ほど、全体で300億円

さらには、2019年の高校総体でも使いたい、
という知事のもくろみがあったようです。

テンダー
おやまあ。豪奢ですな。
「県立体育館について」
野口さん
もともと、県の体育館を立て替えしたい、という話は、
与次郎ヶ浜(よじろうがはま)というところに立て替えるということで、平成23年度末の時点で鹿児島市とも決まっていたんですね。

その内容は、「伊藤祐一郎」という知事の署名も入った報告書として一冊にまとまっているんです。

そういった経過もあり、話もすでにまとまっているのに、
なぜ、突然ここに体育館新築なのか?

ということがきわめてひろく、市民の論争を呼ぶことになりました。

テンダー
あ、もう体育館の場所は2年前に決まっていたんですね。
野口さん
ましてや鹿児島は、死者58名を出した、桜島の大正噴火から来年で100年。

京都大学の先生たちが、遠くないうちに大正大噴火の再来が来るから、覚悟して防災と災害対応、場合によっては島民避難をしてください、と言われている。

そういう状況において、桜島の真ん前の、あの場所に避難所としての性質も備えなければならない体育館が必要なのか?
という、疑問が生まれます。

また、市電(路面電車)の観光路線の延長計画というものもあります。全国で今、路面電車は見直されていますね。

これは鹿児島市の森市長がマニフェストにも掲げたんですが、
その中の一環で、より観光しやすい街作りのために市電のルートを伸ばそう、というものです。

その市電の延長検討ルートの区域内に、ドルフィンポートも含まれていたんです。

なので、そもそも市電も延長できなくなるのでは?と言われるくらいの、市政と密接に関連する話が、県知事から、いきなりポンと出てきた。

英一郎メモ

市電延伸は昨冬の市長選でマニフェストの目玉だったにも関わらず、鹿児島市の森市長は、2013年、8月27日の定例会見でなんと

「2016年12月までの任期中の市電延伸は不透明。実現できない可能性を含めて留保せざるを得ない」
「国や県と検討委員会を設置し、市電延伸を議論してきたが、県の整備計画が白紙になり、環境が全く変わった」
「県の方針がはっきりした時点で、市電延伸を検討しなければならない」

と、計画の大幅な後退を表明しました。

テンダー
なるほど
野口さん
伊藤知事は体育館のことは、(外圧や便宜供与ではなくて)自分から思いついたとおっしゃるんですけども、また次回お話する上海路線問題や、肥薩おれんじ鉄道人事問題のこともあり、独断で走るような政策が目につきます。
「予算規模の意味」
テンダー
独断は良くないですね。
知事は、体育館にした方が街がうるおうと言ってるんですか?
野口
うーん。まずですね、
ドルフィンポートもいずれ契約更新が来ます。
サラ地にするのであれ、今後なにかしら、まちづくりの観点からも活性化に資するものは必要だと思います。

それについては、知事も、鹿児島市も、市議会全体も、言っていて、ハコモノにするにしろ、ハコモノにしないにしろ、何かしらの整備は必要だね、と、
みんな意見の重なるところなんです。

ただ、私は、公園だけにする、というのもありだと個人的には思っています。市民や、観光客や、その交流のための公園。そういうことも考えていました。


ところが、それが体育館だった。

知事の話をよく聞いていくと、
どうやら、国内最大級の「さいたまスーパーアリーナ」がイメージにあるようなんです。
地上7階、地下1階、テナントもたくさん入っている。

そういうのが知事の頭の中にある。

知事の話は、際限なくひろがって行く印象を受けました。
国体という切り口だったのに、どこまでいくんだろう。

これは危ない。丁寧に話し合わないといけません。

まず、必要性がよくわからないし、
決まっていた元の話をひっくりかえしているし、
しかも市との話もなく、いきなり出してくるのは、
あまりにも横暴ではないか、と思うのです。

テンダー
伊藤さんは、体育館というより、スーパー運動場がほしい、てことですね。エンターテイメント場というか。
野口さん
そうなんです。
今回の発表後、反対の反響があまりに激しいので、知事は
「体育館と呼ぶな。スーパーアリーナとちゃんと言ってくれ」
記者の方に再三おっしゃった、とのことです。

当初は、「国体の体育館」といえば、盛り上がって市民に受け入れられる、という思い込みがあられたようです。

ちなみに、元の計画の、与次郎ヶ浜の体育館に、わたしは反対を思ったことはありません。
なぜなら施設の更新は、必要に応じてかならず来ますから。

今回の紛糾は、「ドルフィンポートに新築」という点において、ここまで紛糾したのです。

それでも、知事の話は、留まることを知りませんでした。
話の途中では、

・ドルフィンポートのテナントの方には前倒し撤去の補償金を払う(ただし試算はしていない)、
・その後、スーパーアリーナには、ドルフィンポートにあるテナント全部にはいってもらう、

ということをおっしゃるので、
それなら、ドルフィンポート自体を残せばいいのでは?とすら、私は思います。

これからの時代は、税収が落ちることが確実の、人口減少と少子超高齢化の時代です。

そんな中で、壊してまったく同じテナントを入れる公共事業が、100億円単位で必要なのか?

知事のおっしゃる必要性は、だんだんと説得力を失っていきました。

テンダー
じゃあ、野口さんは、ドルフィンポートに体育館は、
反対なんですね?
野口さん
ドルフィンポートに体育館(スーパーアリーナ)は、
わたしは反対です。

この間の背景として、
5月末の唐突な発表を受けて、

・決め方がおかしい、
・進め方がおかしい、
・発表の中身のなさ、
・巨額な予算、
・この無駄遣いは止めたい、

という署名運動がはじまりました

堂園さんというお医者さんの呼びかけで、
県知事への無駄遣い反対という名目のもと、
(上海への研修と、体育館におけるテナント撤去前倒しの補償金問題に対して)
3週間で4万6千人という方が応じてくださいました。

その署名はもう県庁側に提出されたんです。
それでもなかなか、伊藤知事は無駄遣いを改める気配がない。

ひとつは、それは法的な署名ではありませんでしたから、
実効力、つまりは法的な強制がないんですね。

しかし、法的な拘束力の有無に関わらず、4万6千人の声は小さいものではありません
その声に耳を傾けられない、今の知事のあり方そのものに、
長としての不適があるのではないか。

また、県政の無駄遣いがすすむ構図があるのではないか。ということで、もはやリコールしかない、というところまで
状況は差し迫ってきました。

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この記事の著者

テンダー

ヨホホ研究所主宰の、泣く子も訛る社会派ヒッピー。 電気関係、ウェブ、文章表現、写真、選挙、先住民技術、などが研究対象。 2016年のテーマは、持続可能性の本を書くことと、アウトフローを極めて綺麗にすること。