のぐち英一郎の鹿児島ガイド #6 「3年間で13億円。鹿児島市のコネ人事問題があきらかに」


鹿児島市、縁故採用の実態




のぐち英一郎の鹿児島ガイド #6 「鹿児島市のコネ人事問題があきらかに」

野口さん


今回は調べる中で、
特にかごしま教育文化振興財団というグループと、まちづくり土地区画整理協会というグループに、
無公募での採用数が多い、とわかってきました。



なかでも、かごしま教育文化振興財団は、理事長が鹿児島市長の森 博幸さんなんですけれど、数が際立って大きい、ということがわかってきたんです。


テンダー


具体的に何名くらい?

野口さん
かごしま教育文化振興財団は全体で、

職員62人のうち、無公募が47人。

テンダー


62名のうちの47名!
野口さん


そうです。

テンダー


それはすごいですね。

定員割れとかじゃなくて?

野口さん


いやいや(笑)

47人のうち34人が、嘱託員でした。



財団の管理職の方からの聞き取り調査から、長年にわたり
嘱託員はほぼすべてがコネ採用か、縁故採用だった、ということがわかったんです。

これはおかしい。これは調べなくてはいけない、と思いました。


テンダー


いやはや。
鹿児島ってやっぱりすごいですね。色んな意味で。


ちなみに嘱託っていうのは、具体的にどのような状況を指していますか?


野口さん


自分が財団を見る限りでは、
正規の方のお仕事の補助的な部分などを担当されるようです。



しかし、嘱託も2、3年経つと、正規職員に昇格される方もいる、という状況もわかってきました。



なので、嘱託の方のお仕事というのは、正規の方の補助、もしくは簡単な物については正規の方と同じような仕事、という状況のようです。


テンダー


ふーむ。

この場合、嘱託と正規職員と、待遇はどう違うんですか?

野口さん


正規職員であれば、月額の給料があがります。
また、決算資料を見ていると、幹部の方は1000万円を越えるような退職金をもらっていかれるんですね。



つまり、最初はコネ採用の嘱託であっても、そのままスルッとエレベーターで正規職員に上がれば、いずれは退職金までもらえる、ということなんです。



そういったおかしな人事で長年行われてきている、ということが今回の質問でわかりました。


テンダー


おお、詳しくは冒頭の動画を見てもらいたいところですね。

今回の件は、つまりは市役所が認めた、ってことなんですよね?

野口さん


実際の本会議では、
無公募での採用職員が、どこそこに何名います、と返答はされました。
そして、彼らはそのことを否定しませんけれど、コネ採用をはっきりと
認めることもしない、というのが実際の反応でした。



これを市が認めているのか、というと、「否定はしない」という状況であります。
ただ、私はそこに確実に縁故採用はある、と確証を持って思っているので、
引き続き質問と調査をしていきます。



ちなみに、議会では、よくこういう手法が取られていて、
「実際はそうなんだけど、公務員というポジション的に認めがたい。しかし、事実なので
否定はしない、けれどことさら認めることもしない」という手法は、公務員の方がよく採られるものです。



今回の議会では、明確に否定されなかった、ということが、縁故採用の存在を裏付けるひとつのポイントかな、と思います。


テンダー


そういう市の方・公務員の方は、
質問されて、否定もされず肯定もせず、
内心はどんななんでしょうか?



そして、そういう指摘は改善につながるものなんですか?


野口さん


そうですね。

今回の質問、「こういう厳しい雇用情勢の中において、縁故採用みたいなものは、公平公正な仕事の機会を奪っている」という主意は妥当性があると思うんですね。



その上で、市の活動は、税金でやっている仕事なので、
こういう視点をはっきり提示されれば、
不本意であっても、改善をせざるをえない、と
市役所は感じていると思います。

スピードはゆっくりかもしれません。
これまでまったく手つかずだった話なので。



しかし、ほったらかしてにしてほしかったのに、今回のように言われてしまったら、ほったらかしにするのはまずいな、と考えられると思うんです。

市のみなさんは頭がいいので、これはちょっと放置しておくと、大きな問題になるな、と感じていらっしゃるのでは。


テンダー


ほーう、そういうもんなんですね。


ちなみに、内部告発は、なぜ起こったんですか?

そして、なぜ野口さんところに来るんですか?


野口さん


その方のお話では、


「議員さんにもいろいろいらっしゃるから、
話す相手を考えないと、不正を質す(ただす)のではなくて、隠蔽の方向に持っていかれかねない、と考えていたけれど、あなたの議会質問を見ていると、あなたなら大丈夫なんじゃないか、と思って会うことにした」

という旨をおっしゃっていました。


テンダー


おー!褒められているじゃないですか。
めずらしい。

野口さん


そうですねえ。

私はいつもがむしゃらにやっていますが、ちゃんと見ていてくれる人はいるものだな、と思いました。

テンダー


そういうことって多いんですか?

内部告発を打ち明けられる、ということ。

野口さん


数はとても少ないです。


しかし最近、
人事とは関係ない話で「ちょっとこれはどうなんだ」というご相談が突然舞い込んできたので、
まったく別のことを調べはじめているところです。

テンダー


へえーー!


普段の議会の質問って、
そういう要素が入るものなんですか?


つまり、他の議員さんも、内部告発を受けて質問する、とかってあるものですか?

野口さん


内部告発っていうのも、定義によりますが、
みなさんそれぞれの相談の中で、内々の情報を受けていると思います。


例えば、公共サービスの現場からの声があがって、対応したり、追求したりすることは、そんなに珍しいことじゃないですね。






鹿児島市、タブーに触れるということ





テンダー


話は変わるのですが、今回、質問してたときに、
なんといいますか、議会の空気がピリピリして、
この人はいつか誰かに刺されるんじゃないか、と
傍聴に来てた人はみんな思ったと思うんです。

のっぴきならぬ空気になった。

野口さん


傍聴にいらしてた方から、

「今後、問題を追求する過程で野口は、つぶされるんじゃないか、と感じました。
どうかつぶされないようにしてください」
ということを言われたんですね。



だから、遠くから見ても、それくらい切迫していたのかもしれません。

私自身は、集中して、前にいらっしゃる方々を見回しながら、
どこか特定の部署だけの問題じゃない、ということを伝えたくて、みなさんを見渡していました。



でもその中で、後ろからも固い空気を感じていたので、
やはり全体が逼迫していたのかもしれません。


テンダー


いやー、夜道に気をつけてください。



また、今回のこと、縁故採用に触れたことにみんな驚いていた、という話を聞いたんですけど、
人事のことは、普段は触れない話題なんですか?


野口さん


そうですね。

人事採用における、縁故や口利きのことは、
この10年間では聞いたことがありません。



もう少し調べてみても、平成6年以降の鹿児島市議会・議事録の検索システムでも、こういう観点で聞いた人は誰もいない。


テンダー


!


議事録の検索システムがあるんですか?!


野口さん


それはホームページで、誰でも。

こちら → 鹿児島市議会 会議録検索システム

テンダー


えええー、知らなかったー。

野口さん


平成6年以降のしかありませんが

テンダー


へえーーーーー。

開かれた市政ですね。

野口さん


ちなみに、天下りの質問などは、自分含め過去に何人かいらっしゃるんですけれど、


採用そのものにおける、不透明な意思の介在については誰もしたことがありませんでした。



今回、聞いてわかったのは、かごしま教育文化振興財団は、
彼らの作った規定に基づいてきちんとやっている、と彼らは言うんです。



それは、昭和57年以降、ずっとその方法でやっている、とおっしゃいますし、
土地区画整理協会の方は、昭和46年以降同じ方法で、とのことです。

だから、長年に渡り、無公募をずっとやっていたんだな、と。


テンダー


自分の作った決まりに則ってやることが、きちんとしているのかどうか、ということの証明にはならないですよね。


その無公募に今まで使われたお金というのは、全体でどのくらいなんですか?

野口さん


総額は、過去も延々とはさかのぼりきれないので、
直近3年で、無公募の方に費やされた人件費が税金でどのくらいか、と聞きました。



その返答は、全部で13億円という大きな額だったんです。



私は、その額にあらためて驚きましたし、それは税金なのだから、公募として開かれた形で使われるべきだな、と思いを新たにしました。


テンダー


そこに競争があれば、雇用対策としてその13億円が成立するわけですよね。

野口さん


はい。

テンダー


13億円ってったらもう、おっきな金額ですなぁ。

野口さん


鹿児島市がいかに巨大か、ということをあらためて感じますね。

本当に大きい金額だと、市役所の方の読み上げる数字を、足し算しながら感じました。

テンダー


それを何十年かやったら、体育館も建っちゃいますね。

野口さん


建っちゃいますね。


(次ページ、市役所との駆け引きについて)


この記事の著者

テンダー

ヨホホ研究所主宰の、泣く子も訛る社会派ヒッピー。 電気関係、ウェブ、文章表現、写真、選挙、先住民技術、などが研究対象。 2016年のテーマは、持続可能性の本を書くことと、アウトフローを極めて綺麗にすること。