わな猟師になる。05 – 鹿の解体を映像付きでわかりやすく解説。
前回からの続きで、今日は解体のお話。
(*以下、鹿の解体画像が並びますので、狩猟文化や、食肉文化にご賛同をいただけない方は、閲覧をお控えくださいませ)
ハイ。
というわけで、シカの頸動脈を切り、放血させた後に、内蔵を掻き出します。
内蔵の掻き出し
今までは、獣の解体を、各地で部分部分を習ったものと、我流と、本からの知識を合わせた方法でやっていたのだけれど、はじめてまとまった形で教わりました。これが正しいとか正しくないとかではなくて、わたくしが習いに行った猟師さんの、ひとつのやり方ということで。
- 1.喉笛から、肛門少し上まで皮膚のみ(内蔵を傷つけないように!)に切れ目を入れる。
- 2.胸骨をはずす!
- 3.骨盤を割る
- 4.食道と気管を、なるべく頭骨寄りで切り、そのまま肛門側まで、肺、心臓、横隔膜、内蔵全体を引きずり出す。
→ これが驚きでした。胸骨と肋骨を接続する軟骨にナイフを立てて入れて、きれいに胸骨を外します。
→ 恥骨の中心にナイフを立て、魚の頭を割るときのように、手の腹でナイフの柄のお尻を叩きながら、切れ目を入れていきます。やはり、内蔵を傷つけないように。
→ 肛門まわりは大腸菌などのトラブルが起こりえるため、肛門ごとまるっと腸付きで外す。
内蔵も ちゃんと処理をすれば食べられるようです。特に肝臓は 血抜きという技術がありまして、これをするのとしないのとでは大違い。勉強になりました。
皮剥ぎ
内蔵を掻き出したら一度水洗いをし、皮剥ぎに入ります。こちらは、猟師さんがまとまった技術をもっていないようだったので、トラッカースクールで習った方法をば。
- 1.首の皮膚をぐるっと一周切る。
- 2.手首・足首もそれぞれ ぐるっと一周ずつ切る
- 3.今切った手首足首の切れ込みから、さきほど内蔵を出すときに切った首から肛門までの切れ目へ、直線的に皮膚を切る。
- 4.首の切れ目から、刃物を使わずに指で剥がしていく。
皮剥ぎは、慣れれば5分かからないくらい。指を使うのは、毛皮を傷つけないためで、剥がした毛皮は もちろん〝なめして〟使います。シカの場合は、頭から吊るすと「コートを脱がせるように」毛皮を剥ぐことができます。後脚で吊るすと、剥がれにくいらしい。
精肉
- 1.手足を、ひじ・ひざの軟骨で切り、外す
- 2.延髄あたりの背骨の接合部に刃を入れ、頭を外す
- 3.背骨上に、肩辺りから臀部まで、まっすぐ切れ目を入れる
- 4.今入れた背骨の切れ目から、肋骨沿いを削いでいく。そこが背ロース。
- 5.肩甲骨と、肋骨のすき間に刃を入れ、前脚を外す
- 6.全体を裏返し(仰向け)、骨盤に沿って大転子(大腿の付け根)を外す。後脚が外れる
- 7.肋骨内の背骨に付いている内ロースを外す
- (8.今回は教えてもらえませんでしたが、骨盤内のフィレ肉もおいしいらしい)
ここまで、要領よくやれば10〜15分くらい。
ここからは、スジ取り(シカはスジが多く強い)、前後脚の骨を抜くなどの作業に入ります。この作業は時間がかかりますが、やはり上達すれば、2時間以内にはおさまるのではないでしょうか。
「シシ(イノシシ)を食ったら、シカなんて食う気にならん」とたびたび言われましたが、わたくし、人生で食べたどの肉よりもこのシカがおいしかったです。
毛皮は なめせば使えるし(なめし方は、また別の機会に)、骨もいろいろなことに使えそう。内蔵は「食べれるけど手間がかかるから食わん」とのことで、こちらも次の機会に挑戦したいです。
罠についても教わったことはたくさんあります。が、書いていいのかよくわからないので、自分の中で消化されてきたら、お伝えしますね。
とにもかくにも、非常に学ぶことの多い & 考えさせられる技術の伝承でした。
しばらく練習と実践をしてみないことには、罠についてはコメントできません。
というわけで、無事下山。
つづくー!
(今後ともよろしくどうぞ)
こんばんは。
初めまして。
自分も今年からわな猟師になりました。
いろんな事が初めての経験で、命を頂くという貴重な経験をさせてもらってます。
よろしければ私のブログもご覧ください。
くろりんさん こんばんは。はじめまして。
ブログ拝見させていただきました。
初日から 大物がかかったようで、幸先よいですね。
絞め方など、やはり先人の知恵をよく聴くことが大事なように思います。僕の場合は、アメリカの先住民技術を習いに行きましたが、1万年の伝承の結果、残ったものが今あるわけで、やはりどれも考え尽くされ、洗練されたものでした。
というわけで今後ともよろしくお願いします。
ではまたまた。
解体、おどろいた!内臓って、つながってるんね。
ナイフの持ち方も、独特だなあ。
行き交うタイヤの音が妙にシュールで、救われたような。
ボーイズ、手洗ってくださいねー。
marさん
内臓はつながっちょりますよ!
ナイフは、「切るなら自分(手がすべっても)」という考え方の下、ああなるみたいです。複数人で一頭を捌く機会が多いからでしょうか。
手は洗いましたが、うちひとりはダニに刺されました。3年はかゆいそうな。
へたくそ。
もっと手際よく
これはお粗末や、見てて残念。失礼
おお、4年半前の初心者チームの動画にコメントありがとうございます。
ぜひ最新の、ハンターさんの素晴らしい手際を全行程拝見させてください。飛騨高山はたくさん鹿がいるんでしょうな。
はじめまして。
まだ一度だけしか イノシシを捌くのをそれも手伝っただけです。
ですから内臓の内容物を処理しようとしたのですが、上手に出来ません。
処理の仕方とか映像では撮られていないのでしょうか。
もしあれば 教えて欲しいのですが。
お肉の捌き方はとても 参考になりました。
宜しくお願いします。
内蔵の内容物とは、具体的にどのような作業をさしていますか??
昔の未熟な動画で申し訳ないですが一応、こういうのもあります。
http://dai.ly/k5FJU6xzctsWoK2yviv
まだなんの知識もないけれどいつかシカ猟をしてみたいなと思っていたので解体の動画はとても参考になりました
「04ー鹿を絞める」の頸動脈の位置についてなのですが胸骨ってどこですか?
なかなか仕留められずに苦しませるのも精神的にきついので一刺しで仕留めるようにしたいです
人様の画像ですけど、
http://bit.ly/2kry2vi
この画像の、 carotid artery が頸動脈です!
勉強になりました。
何よりです!
初めまして。モーラコンパニオンを使い倒している様を拝見し同刃物のポテンシャルを理解しました。というのは他の方の動画は太い薪を無理矢理コンパニオンで叩いて「うーん使いにくい。けどコスパ良い」というのが多いからです。
このページの皮剥ぎの場面文中「・・・こちらの猟師さんはまとまった技術を持っていないようだったので・・・」は少し残念な心境と技量的な立ち位置が集約されていて狩猟をやったこと無いわたしでも察しがつく文章がわかりやすいです。
職人さんは経験値が全てだから正しい事を知らない場合や体系的に通しで知らない場合が多々あり、全て出来ない人が結構多いです。精肉の動画中の冒頭でその思いを質問でぶつけられてましたが、
控えた方がいいかと思います。猟師さんがタバコ吸ってたとかあるとは思いますけど、その後も指導してくれてたので良い人だと思いました。